。というのは、老中共が三家あたりへ押しが利《き》かない、そういう時は、薩摩守も同意でござる、と言うと、三家も屈伏するというていたらく。だからいよいよ薩摩を増長させる。このごろの増長ぶりでは、どうやら徳川家を倒して、次の天下を乗取ろうとは言語道断。いずれはこの邸からブッつぶしてかからぬことには、天下の見せしめにならぬわい。
そういうことを、神尾が心肝にこたえつつ、そこを引返して品川へ出ると、海岸の茶屋で、蛤《はまぐり》を焼かせて一杯飲みながら、海を見ると、さすがに気がせいせいするが、お台場を見ると、また癪《しゃく》だ。いったい、このお台場を外様《とざま》の大名に任せたということが、すでに徳川の名折れだ。痩《や》せたりとも、枯れたりとも、徳川の手で造り、直参の旗で固めなけりゃならん、と我々も若い時にがんばったものだが、幕府の力が足りない。この台場なんぞも、薩摩の力を借りてやり上げたものだ。
これが出来上った時に、薩摩守が、ぜひひとつ、老中の阿部伊勢守に見てもらいたいとのことで、伊勢守が大目附あたりをしかるべく召しつれて見に来た時には、薩摩の太守が門の表まで出迎えて、ていねいな挨拶だが、
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