》うことならば何なりとも」
「まあ、雨が降り出してきましたよ、これこそ本当にやらずの雨、今日は一日、あなたのお身の上話を承りましょう、お望みならば、わたしの前身……鬼でも蛇でもございませんが、お話し申し上げれば西鶴の種本になるかも知れません」
「しからば――」
侵入者は、ついに客人としてもて扱われることになりました。無制限の逗留と、無条件の寄食を許されて……
六十六
神尾主膳は、このたびの新しい使命の下に、いよいよ京都へ行くことにきめて、その暫時の名残《なご》りのような意味で、江戸の市中を一通り見て置こうと思いました。
そもそも、主膳がこのたびの使命というのは、前にしるしたように、全く無任所として、京都の鷹ヶ峰に住っておればいいということだけです。そうして遊びたいだけ遊んで、その見たところと、聞いたところと、感じたままを、江戸のある方面へ知らせればいいというだけの役目であります。つまり情報部とか、隠目附《かくしめつけ》とかいうような意味、悪く言えば一種の高等スパイのようなものらしいが、当人はそうは思いません。
まあ、昔の石川丈山という男の役どころをつとめる
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