う、周囲などには驚きませんが、内から魔がさすのがいちばん怖いことです。あなたは、魔だと思いましたが、本当は思い違い、かわいそうなさすらい人ですから、それで大切にして上げますのよ。それはそうと、ごゆっくりお寝み下さい」
「では御免蒙りまして。飢えが満たされると睡眠の慾が昂上して来ました、もう、意地も遠慮もありません、休ませていただきます」
「さあ、どうぞ」
そこで、侵入者は、以前の蒲団《ふとん》の中へ案内されると、忽《たちま》ちに、死せるもののように眠りに落ちてしまいました。
六十五
その翌朝、昨夜の侵入者と、この庵《いおり》の主《あるじ》なる若い老尼とは、お取膳で御飯を食べました。
初茸《はつたけ》の四寸、鮭《さけ》のはらら子、生椎茸《なましいたけ》、茄子《なす》、胡麻味噌などを取りそろえて、老尼がお給仕に立つと、侵入者が言いました、
「何から何までのおもてなし、恐縮千万に存じます、それに、今になって気がつくと、昨晩、あなたはお寝みになりませんようで」
尼さんが答えて、
「はい、寝みませんでした」
「どうも、重ね重ねお気の毒なことをしたと感じています。実は
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