お公卿さんにも、あれだけの度胸があるものかと、僕はまずそれで参ったよ。さて、通されて密談ということになって、三位から討幕の秘計を諄々《じゅんじゅん》と聞かされてみると、今度はその内容に於て、実際恐れ入った、我々の考えている以上の周密と、思っている以上の大胆と、百折不撓《ひゃくせつふとう》の決心を持っておられるには驚いた。日本はじまって以来の政治上の大改革を行う、この精神と、方法と、手段と、順序を、大所から細微に至るまで、ああも大胆に、且つ周到に包蔵しているあの頭は大したもので、そう思って、僕はあの人の頭の形をつくづくと見直すと、どうもその形からして尋常人の頭ではない、あれは大したものですぜ、お公卿さんの冠を取った方がかえって頭が大きくなる、あれだけの頭は今日の日本にありませんなあ。先頃《せんころ》まで三奸《さんかん》の随一に数えられたが、賢の賢たる所以《ゆえん》も備わるが、奸の奸たる毒素も持たざるなし、朝《あした》には公武の合体を策し、夕《ゆうべ》には薩長の志士と交るといえども、表裏反覆の娼婦の態を学ぶものではない、幕府をも、薩長をも呑んでかかっている腹がありますぜ。古来のお公卿さんは
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