すっかり売払って、アメリカへ渡りました、アメリカの、インデアナ州というところへ土地を買い、思いきって理想の社会を作ってみましたが、失敗してしまいました」
「もう少しくわしく、その人のことを話してみて下さい」
「いや、話せば長くなるです、およそ自分の理想の新社会を作ろうとして、その実行に取りかかって、失敗しなかったものは一人もありません、みな失敗です、駒井さん、あなたの理想も、事業も、その轍《てつ》を踏むにきまっています、失敗しますよ」
 異人氏は、駒井の事業慾に対して、三斗の冷水を注ぐようなことを言いました。せっかくのことに成功を祈るとは言わず、失敗が当然だということを言いました。聞きようによれば、不吉千万の言い分でありますけれど、駒井は深く気にかけません。
「失敗とか、成功とかいうことは、ただ仕事の成績だけ見て言うことじゃありませんよ、成功と信じても、ねっからツマらないこともあり、失敗だ、失敗だと言われることが、かえって大きな時代の推進力をつとめることもあるものだ、今のそのオーエンという人が、どういう失敗に終ったか知らないが、そういう勇気と実行力を持ち得る人は、尊敬すべきものだ、信ず
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