のだ。それが、ややもすれば金椎《キンツイ》に虚を突かれたり――孤島の哲学者に逆説法を食ったりするのは、事が自分の研究の職域以外としても、光栄ある無識ではないのである。自分の究《きわ》めているのは、今の哲学者の見るところによると、欧羅巴文明の糟粕《そうはく》かも知れない。かの糟粕を究めつつ、自家の醍醐味《だいごみ》も知らないということになると、いい笑い物だ。
 学問、研究、知識は、いよいよ広く、いよいよ大きい、この海洋のようなものだ、というような反省が駒井の心に波立ちました。

         五十四

 その翌日、約束の通り、異人氏は駒井の植民地へやって来ました。これを迎えた駒井は、一応植民地を見せた上で、己れの舎宅へ案内して、ここで、椅子をすすめて相対坐しての会談です。この時に異人氏は次のように言いました、
「駒井さん、あなたの理想はよくわかります、地上に理想郷を作ろうという企ては、今に始まったことではないです、昔からよくあることです、欧羅巴では、哲学者プラトーなども、その理想の先達《せんだつ》の一人です、実行はしませんでしたけれど、プラトーは、その理想を持っていました、最近では、
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