みたが、あいにく、人の出入りはほとんど打絶えた門、ほとんど開《あ》かずの門かと疑われるほどでしたが、「光仙林」とものした表札の、目立たぬけれども新しいことによって見ても、最近に人が住みつつあるということは、疑うべくもありません。胆吹は完全に人の住み捨てたところ、ここは人が有るべきところで、人のなきは、なきにあらずして留守なのだ。
 それも道理、この日、宇治山田の米友はがんりき[#「がんりき」に傍点]の百蔵と、洛北岩倉村へ出向いて不在。
 不破の関守氏は、その隠宅でしきりに小物の表具を扱っている。もとより素人経師《しろうときょうじ》だが手際が凡ならず、しきりにかきあつめた小美術品の補綴《ほてい》修理を、自分の手にかけて、あれよこれよと繕いに余念がない。
 女王は、安朱谷《あんしゅだに》の雲深きところに鎮座ましまして、人をしてその片鱗をうかがわしめることをゆるさない。臨時かしずきの役を承っているお角さんは、供待部屋を己《おの》れが本拠として、すやすやと昼寝の夢をむさぼっているというていたらくですから、さしも広大な光悦屋敷が、さながら人あってなきが如くなるも道理です。
 兵馬は、それがために
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