る、要らぬ遠慮――
と兵馬は決心して、その戸棚の中のめぼしい一つを、力を極めて押破ってみました。
別に一ツ目小僧も出ては来なかった、これは確かに夜のもの、夜具《やぐ》蒲団《ふとん》の一団と認定のできた大包み、それを引出して解いて見ると、果してその通り、絹紬《きぬつむぎ》のまだ新しい夜具が現われる。
とこうして、兵馬はついに、その新しい夜具を豊富に打着て、就眠の人となりました。
働いているから眠りに落つることも早い。
四十五
肉体は疲れているから、眠りに落つることははやかったけれども、神《しん》は納まっていないから、睡眠が必ずしも安眠というわけにはゆかない。夜半、兵馬の胸を推《お》すものがある、うつつにながむれば、
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「無明道人俗名机竜之助之墓」
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それは湖畔の木標ではなく、まだ切立ての一基の石塔であります。一方を見ると、同じような石塔が比翼の形に並んで、それに、[#「それに、」は底本では「それに」]
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「同行淡雪未開信女之墓」
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とある。
この二つの石塔が、ど
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