ほかはござりませぬ。
 ただ、たった一つ――そのお方が世の常の女の方と違っておいでになったのは、入るから出るまで、昼も、夜も、しょっちゅう頭巾《ずきん》を被《かぶ》っておいでになりました。いついかなる場合にでも、あのお方が頭巾をお外しになったのをお見かけしたことがございません。でございますから、お面《かお》つきや、御縹緻《ごきりょう》のほどは少しもわからないのでございます――なに、しょっちゅう頭巾のかぶり通し――はてな、兵馬が気ぜわしいうちにも頭を捻《ひね》って、考えさせられたのは、誰と思い当ったわけではなく、その点に、右の女性の性格の重点があると感じたのでしょう。
 では、ひとつ、わしは少し心当りのことがあるから、明朝早速、胆吹へ上って、その女賊の大将にお目にかかって、お聞き申してみましょう。
 それはおよしあそばせ、ちょっと見ては、左様なおしとやかなお方でございますけれども、その悪党は底が知れぬ。気に入らぬものはみんな縊《くび》り殺して、穴蔵《あなぐら》の底に投げ落してしまうのだそうでございます。現に、幾人かの人の屍《しかばね》が、胆吹の奥の山の洞穴の底に埋もれて、夜、青火が燃えさ
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