た。
掃除ということに、こんなに身を入れたことは、お絹としては、生れてはじめてのようなもので、掃除をきれいにしてみると、室がきれいになるばかりではない、身心も何だかさっぱりして、若々しい気分に満ちて、まだ本当の意味では味わったことのない新所帯の気持、どうやら新婚の気分といったようなものに浮き立つのも、いまさら気恥かしい。
夕方になると、約束よりも早く立戻った神尾主膳。
お絹に賞《ほ》められること、そうして、その日の晩餐も、睦《むつ》まじく、お絹の待構えた手料理とお給仕で快く済ましてから、食卓の談《はなし》がはずむ。
「聞きしにまさるエライ坊主だよ、あれだけの見識とは思わなかった、実際会ってみると談論風発、当代の人豪顔色無しだ、なるほど、あれなら輪王寺を背負って立って、関東のために気を吐くこと請合い、ちょっと、あれだけの大物は無いなあ、坊主にして置くは惜しい、政治家にしても、軍人にしても、大仕事のできる奴だ」
と言って感歎の声を惜しまない。お絹も煙にまかれて、
「そんなにエライ坊さんが、今時、上野にいらっしゃるのですか」
「いるとも、いるとも、あの坊主の説を聞いて、おれの頭の中は一
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