茶の間へ入って見ると、どうでしょう、夥《おびただ》しい御馳走が、ちゃぶ台の上狭きまでに立てならべられて、膳椀も、調度も、取って置きのを特に持ち出したような体《てい》たらくですから、神尾が、いよいよくすぐったいような気持です。
まもなく二人がお膳についた時に、大丸髷のお絹が、きちんと身じまい薄化粧にまで及んで、たいへんな澄まし方でお給仕に立つのが、あんまり現金で痛み入るくらいのものでした。
「何もございませんが、今日はお婆さんの手料理ですから、たくさん召上っていただきます」
「お手料理かなあ、それは痛み入ったよ」
「お酒は差上げません、精進を妨げるとお悪いから、お酒は差上げません、その代り、お気に召しましたら何なりと」
「どうしてまあ、今日はこんなにもてなされるのかなあ、あとが怖いようだぜ」
「あとの怖いものは、今日はすっかり取上げましたから御安心くださいませ」
と言って、お絹がお鉢を取ってお給仕に当りました。
神尾としては、この女のもてなしで、こんな晴れやかな気分に置かれたことはない。
どういう了見で、今日に限って、こんなにまでしてくれるか、わからない。自分の誕生日でもなければ、
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