呑み込んだ思い入れで、胸を揉《も》む形が可愛らしいお婆さんだと言って、神尾をよろこばせました。
 そうして、精進にはじまって精進に終った神尾が、その夜は無事に閨《ねや》に入りました。

         三十八

 寝についたが、妙にかん[#「かん」に傍点]が高ぶる。今晩の鈴木邸の会談が骨となって、それにさまざまの想像の肉が附こうというものです。
 それでも暁方《あけがた》になると神経が鎮《しず》まって、それから熟睡に落ちて、朝日の三竿《さんかん》に上る頃にやっと眼をさましました。こんなことは、いつもの習いですが、昨晩の昂奮は内容が日頃と違ったまでのことです。
 不承不承に起き上って見ると、お絹が台所で何かと小まめに働いているらしい。こんなことも珍しいもので、起きて見ると、おめかしの最中であってみたり、どうかすると置いてけぼりを食って、一日を焦《じ》らされてしまうこともおきまりのようなのに、今日はお台所で甲斐甲斐しく立働いている物音が、なんだかくすぐったいような気持がさせられて、それでも、一軒の家で主婦がまめまめしく台所で働く物音は、悪い感じは与えないものだと思いました。
 それから、
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