なのですが、これがすっかり消滅して、
「お松もいよいよ女になった、これで、おれも安心だ」
という安心と満足でいっぱいなのは、どうしたものでしょう。こうして七兵衛が、大安心と満足で満ちきっているところへ、天幕の外から、
「おじさん、来ているの?」
これも、うら若い女の声でありました。紛《まご》う方《かた》なき奥州の南部で、七兵衛入道がむりやりに押しつけられて来た、お喜代という村主の娘の声に相違ありません。
三十一
「お喜代坊か」
と七兵衛が言ったので、
「おじさん、一人?」
と答えて天幕の中へ現われたのは、湯の谷の温泉で、きわどい時に拾い当てた山方の娘のお喜代であります。
お喜代は、紺飛白《こんがすり》のさっぱりした着物をつけて、赤い帯をしめ、手拭を髪の上に垂らして、手甲《てっこう》脚絆《きゃはん》のかいがいしいいでたちで入って来ました。その張りきった体格と、娘でありながら、まだ子供のような無邪気な初々《ういうい》しさが、思わず七兵衛を見惚《みと》れさすものがあります。
「ああ、わしは今、駒井様へ行ってお指図を受けて来たところなんだが、もう、みんな働きに来るだろ
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