[#「おとずれ」に傍点]た時に、平静を極めた二人の、常と少しも変らない態度とあいさつのうちに、どこをどう見つけたか、心のうちに肯《うなず》くものがあって、そこはやっぱり狸ですから、二人がなにくわぬ表情をしている以上に、この男は尋常な面つきで、いんぎんに聞くべきを聞き、述ぶべきを述べて、天幕の中へ引下って来たが、まだ働き手は誰も出動していないテントの炉の前で、煙管《きせる》を一つポンとはたきながら、七兵衛入道は変な面をして、思わずこう言いました、
「お松も、いよいよ女になったなあ」
 駒井甚三郎も、お松も、この人に会っては、皮をかぶることはできないのです。
 だが、そういった七兵衛入道の面には、いささかも意地の悪い表情はなく、それが結局、二人の喜びに勝《まさ》るとも劣ることなき、躍動を抑えて、ほほえむかの如き含蓄の深い色を漂わせて、
「縁は異なものとはよく言ったものだ、あの子が駒井の殿様のものになろうとは思わなかった、駒井能登守を、こっそりと独占《ひとりじめ》にする凄腕《すごうで》を持っていようとは思わなかった、さて、おれが仕込んで、おれ以上の腕になったというものか、全く以て小娘は油断が
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