ようです。
 ある時は、お君さんに済まない! というような夢心地になって、ハッと我にかえることさえありました。お君さんの運命が、今日となって、わが身に降りかかろうとは、それは夢の外の夢のような思いに堪えられません。
 それから、お松はなるべく、主人の室に遠ざかって仕事をしようとしました。わざと次の間に持ち出してみたり、今まで心置なく物をたずねたり教えを受けたりすることも、この頃からなるべく口を利《き》かぬように、物を言わぬように、できるならば、ひとりだけ離れて船の中にいたいというような気分に迫られて来たのが、自分でもわかりません。
 駒井もまた、気のせいか、態度に変りはないとは言いながら、お松に向ってする口の利き方が鈍くなって、少なくなったように思われます。お松は、この心の間の裂け目を悲しいと思いましたけれども、その悲しさのうちに、何か甘いものが、重い心の躍動というものがあるのを感ぜずにはいられません。
 それから幾日の間、こんなようにして、二人は、外見は少しも変らずに、助けつ助けられつして過しましたが、その間にも、先日のような突っこんだ話は少しも出ませんでした。
 駒井は冷静な科学者
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