んりき」に傍点]が、このところに御座あっては危うし危うしとお知らせ致しますと、青嵐の親分は心得たもので、直ちにりゅうとした羽織袴に大小といういでたち、今こそ浪人はしながらも、さすがに二本差した人の人柄は違いますな、そのりゅうとした羽織袴に大小でもって、御殿に有らん限りの金銀米穀を大八車の八台に積ませましてな、エンヤエンヤで景気よく一揆軍へ向けて乗込ませました、つまり、買収、もしくは懐柔というやつなんでげすな、これこの通り金銀米穀をお前たちに取らせるから、胆吹山を攻めるのはやめろ、攻めたところで、新築の建前が少々と、新田が少しあるばっかりだ、行こうなら諸国大名の城下へ行け、三十五万石の彦根へ行け、五十五万五千石の紀州へ行け、大阪へ出たら鴻池《こうのいけ》、住友――その他、この近国には江戸旗本の領地が多い、新米《しんまい》の胆吹出来星王国なんぞは見のがせ見のがせ、とこういう口説《くぜつ》なんでげして、その策略がすっかりこうを奏したと思いなせえ」
「なるほど」
不破の関守氏は、手紙よりは会話の方に向って少しく等分が崩れる。がんりき[#「がんりき」に傍点]は相変らず、自分の功名をでも吹聴《ふ
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