ギリスだとのことだが、長州や薩摩だって同様だ、徳川が憎いからといって、毛唐に国を売るような振舞はすまい。
だが、意地となると、どういう番狂わせが出来るか知れたものでない。今時きっての知恵者だという勝安房は、いったい、どういう考えを持っているのか。おれは一概にあいつを奸物だとは見たくないのだ。彼の本意を聞いてみたいものではないか。
且つまた、小栗のはらがドコまで据わっているか、これも一番見届けたいものではないか。
その他、いよいよという時に頼みになる奴は、ドコの誰で、どうしている。
神尾が、しばし眼をつぶって沈思の体《てい》であったが、やがて開いた眼を落すと、読みさした「夢酔独言」の上に落ちて来る。
以前ほど気乗りはしないが、とにかく、もうあと少しだ、読んでしまってみてやろうという気になって、丁をめくってみましたが、もはや心が全く書物の上から移ったようで、それでも、眼はその文字の上を惰力的に追っている。
七十四
神尾主膳は、せっかく興味をもって読みつづいていた勝の親父の自叙伝を、さきにはビタが来て妨げ、今はお絹が来て中断されたが、さきのビタは問題にならず
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