六百万両を借りる!」
 神尾は複雑な意味で、驚異の叫びを立てましたけれども、お絹の頭は単純な貸借関係と、金額の数字の多少だけのもの。
「ここで、あなた、駒井様あたりがその間に立って、異人さんと口を利《き》くには打ってつけのお方じゃありませんか、あんなお方が一口|立会《たちあい》をなされば、あなた、六百万の一割のさやをいただいても六十万両――万事その伝なんですから、異人さん相手に大物をこなしさえすれば、濡手《ぬれて》で粟《あわ》の手数料――うまく当れば、あなた江戸一、三井や、鴻池を凌《しの》ぐ長者にもなれようというのは、今の時勢を措《お》いてはありません。それを知りつつ、洋学が出来ないばっかりで、宝の庫に入りながら、指を銜《くわ》えて、みすみす儲け口を取逃がしてしまうのが残念でなりません」

         七十三

 お絹は今日は、これだけのことを話して帰りました。
 洋学の出来ない恨みを、おれに向って晴らしに来たようなものだが、それはたしかにお門違いだ、当然、駒井甚三郎のところへ持って行かねばならぬものを、戸惑いしておれのところへ来た。
 だが、考えてみると、女というやつの考え方は
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