ニ、何者トモ知ラズ、狼藉者《ろうぜきもの》ガハイッテ惣領忠蔵ヲキリ殺シタガ、ソノ時、早速ニ使ヲヨコシタ故、飛ンデイッタガ、モハヤ事ガキレタ、翌日心当リガアッタカラ、小石川ヘ行ッタガ立退イタト見エテ知レヌカラ帰ッタ、ソノウチ大兄ニ近親共ガ来テ相談シテ、オレニ当分林町ニ居テクレロト云ウカラ、毎晩毎晩泊ッテ居タ、昼ハ用ガ有ルカラウチヘ帰ッテイテ、ソノ月ノ二十五日ニ、ケンシガ来テ、二十九日ニハ忠蔵ノ妻ト、兄ガ妻ト、忠蔵ノ惣領ノ※[#「月+毛」、117−16]太郎ヲ評定所ヘ呼出シニナッテ、オレト黒部篤三郎ト云ウ兄ガ三男ガ同道人ニナッテイタガ、ソレカラソノコトデ一年ノ内、月ニ二度位ズツ評定所ヘ出タ、或時同所御座敷ニテ大草能登守ガ与力神上八太郎ト云ウ者ト大談事ヲナシタガ、同所留守居ノ神尾藤右衛門、御徒目附《おかちめつけ》石坂清三郎、評定所同心湯場宗十郎等ガ中ヘイリテ、段々八太郎ガ不礼ノ段ヲ詫《わ》ビルカラ、大草ヘモ云ワズニ帰ッタ、オヨソ壱時《いっとき》バカリノコト、御座敷中ガ大騒動シタガ、イイキビダッタ、相士ノ者ハ皆フルエテ居オッタ」
[#ここで字下げ終わり]
 二番目の兄というのは男谷精一郎のこと
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