た」
「鐚がそこを賞《ほ》めやしたところが、ことごとくお大尽のお気にかないました」
「馬鹿野郎!」
「これは重ね重ねお手厳しい、そういちいち、馬鹿の、はっつけ[#「はっつけ」に傍点]のと、あくたいずくめにおっしゃっては、風流が泣くではございませんか、第一殿様の御人体《ごにんてい》にかかわります、お静かにおっしゃっていただきてえ」
「その第五句の南面という言葉がはなはだ穏かでない、町人風情のかりそめにも用うべからざる語だ」
「へえそんなたいそうな文句を引張り出したんでげすか」
「南面というのは天子に限るのだ、この文句で見ると、三一旦那なるものは、何か蒸気船に乗って南の方へでも出て行く門出のつもりで、こいつを唸《うな》り出したものだろうが、南面して行くとは、フザケた言い方だ、勿体ないホザき方だ――ただ笑うだけでは済まされない、不敬な奴だ!」
「へえ――大変なことになりましたな」
「これ、ここへ出ろ、鐚、おれはこう見えても――物の分際ということにはやかましい、痩《や》せても枯れても神尾主膳は神尾主膳だ、鐚は鐚助――三一風情がドコへ行こうと、こっちは知ったことではないが、南面して行くとホザいた
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