えぬことによって充分に御賢察が願いたい――衣も足り、食も足り、懐ろ工合の方も、当節は異人館出入りのために外貨獲得てやつが成功いたしやして、至極豊かでござりやす、かくて最後に来《きた》るものが風流――その風流の御相談に参じやした」
「まあ、言ってみろ」
「拙《せつ》のお出入りの旦那に三一小僧《さんぴんこぞう》というのがござりやして、その旦那が近頃、和歌に凝り出したと思召《おぼしめ》せ」
「和歌――歌だな」
「いわゆる、みそひともじなんでげす。その旦那が次のような歌をお詠《よ》みになりまして、鐚、どんなもんだ、点をしてくれろとおっしゃる、内心ドキリと参りましたね、実のところ、鐚も十有五にして遊里にはまり、三十にして身代をつぶした功の者でげして、その間《かん》、声色、物まね、潮来《いたこ》、新内、何でもござれ、悪食《あくじき》にかけちゃあ相当なんでげすが、まだ、みそひともじは食べつけねえんでげすが、そこはそれ! 天性の厚化粧、別誂《べつあつら》いの面《つら》の皮でげすから、さりげなくその短冊を拝見の、こう、首を少々横に捻《ひね》りましてな、いささか平貞盛とおいでなすってからに、これはこの新古
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