もこしらえたいが、銭がねえというところだろう」
主膳も、いささかアクドイ応酬を致しましたが、鐚に於ては洒唖乎《しゃああ》たるもので、
「どう致しやして、衣食足って礼節を知る、古人はいいところを言いやした、鐚儀が不肖ながら食物は今朝アブ玉で、とんとお腹いっぱいこしらえて参じやした、食の方は事足りて余りあり、衣の方に於きましては、これごらんあそばせ、上着が空色の熨斗目《のしめ》で日暮方という代物《しろもの》、昼時分という鳶八丈《とびはちじょう》の取合せが乙じゃあございませんか。それにこれ下着が羊羹色《ようかんいろ》の黒竜門、ゆきたけの不揃《ふぞろ》いなところが自慢でげして、下がこうごうぎと長くて、上へ参るにつれてだんだんに短く、上着は五寸も詰った、もえるのツンツルテン、舶来飛切りでげすよ、羽織がこれ萌黄《もえぎ》の紋綾子《もんりんず》で、肩のあたりが少々|来《きた》っておりまする」
「うむ、なるほど、田舎の貧乏医者という衣裳づけだ、熨斗目が利いているよ」
「かくの通り、衣食足って礼節は、本来ビタの地《じ》にあることなんでげす、現に殿様の御身の上の栄枯盛衰にかかわらず、かくまで忠義の志をか
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