然だが、勝家が近畿にいたら、あんなことはありますまい」
 こんなことを語り合って、いざや両々、これでお別れという時に、青年が、
「僕、お別れに詩を吟じましょう、今のその渝州《ゆしゅう》に下るを一つ……」
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峨眉《がび》山月、半輪ノ秋
影ハ平羌《へいきやう》、江水ニ入《い》ツテ流ル
夜、清渓ヲ発シテ三峡《さんけふ》ニ向フ
君ヲ思ヘドモ見ズ渝州ニ下ル
[#ここで字下げ終わり]
 青年は高らかに、その詩を吟じ終ったが、自分ながら感興が乗ったと見えて、
「もう一つ――陽関三畳をやります」
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渭城《ゐじやう》の朝雨、軽塵を※[#「さんずい+邑」、第3水準1−86−72]《うる》ほす
客舎青々《かくしゃせいせい》、柳色新たなり
君に勧む、更に尽せよ一杯の酒
西の方、陽関を出づれば故人無からん
[#ここで字下げ終わり]
「無からん、無からん、故人無からん」を三度繰返された時、誰もする別離の詩ではあるけれど、今日の兵馬の魂がぞっこんおののくを覚えました。
 さて、と二人は立ち上りました。
 ここで二人は、近江と越前へ、おたがいにまだ手に持って、頭に載せない取
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