いです、たしかに引受けました」
 それと知れば、ただではこの使はつとまりませんよ、何ぞ奢《おご》りなさい、とでも嬲《なぶ》りかけらるべきところを、この好青年は、悉《ことごと》く好意に受取ってしまったものですから、兵馬はいよいよ済むような、済まないような気分に迫られたが、今更こうなっては打明けもならず、また、ブチまけてみるがほどのことでもないと、
「では、どうぞ、お頼みします、その代りに君の笠を貸して下さい」
「竹の饅頭笠《まんじゅうがさ》で、いやはや、御粗末なもので失礼ですが、お言葉に従いまして」
 青年は、自分のかぶって来た饅頭笠を改めて兵馬に提出したが、これはなんらの文字を書こうとも言わず、それはまた提灯骨《ちょうちんぼね》で通してあるから墨の乗る余地もないもの。
 これが縁で袖摺り合う間、二人は十年の知己の気分になって、ここで、おたがいに携帯の弁当を開き、水筒の水を啜《すす》って、会談多時でありましたが、青年は食事中に、歴史的知識を兵馬に授けました、
「ここです、この場所が、柴田勝家じだんだ[#「じだんだ」に傍点]の石というのです、織田信長が本能寺で明智のために殺された時、柴田勝
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