に感じてやらなかった自分がかえって大人げない! 今となってみると、無性に何だか、あの女がかわいそうだ。あの女としては、全力を尽して、自分の身上を働きかけて来たのだから、その意気を買ってやるのもまた男ではないか。必ずしも清浄潔白とは言えない身で、変なところへ意地を張って来てみたのが、おかしい。なお一皮の底を剥いで見ると、あの種類の女には毒がある、毒というのは誘惑の毒ではない、体毒がある、つまり悪い病気がある、それを内心怖れていじけたのか――何にしても、女は素肌で来ているのに、甲冑をかぶり通して来た自分が卑怯未練だ!
兵馬は、その思いに迫られてみると、手の中の珠《たま》を落して来たような焦燥を感じたり、宝かなにか知らないが、溢《あふ》れきった蔵の中に入って手を空しうして出て来た、といったような物足らなさが、ひしひしと心に食い入って、もう一ぺん引返して、女を見てやろうかという気分にさえ襲われたが、二十里も来て、ばかばかしい、そんなことが――と冷笑してみたりしたのですが、結局、高山以来の山の道中の、女のもてなしが、ここへ来て、ひしひしと体あたりを食《くら》い、あのとき突返した自分の受身が、今
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