《いくばく》もなくして運命逆転――相手の宿将の城を焼き、一族を亡ぼす秋《とき》になってみると、秀吉としては、勝家の首を挙げるよりも、三度の古物《ふるもの》ではありながら、生きたお市の方の肉体が欲しい。勝家は勝家で、あらゆる羨望を負いながらお市の方を我が物としたけれども、元はと言えば主筋に当る、これをわが身、わが家の犠牲として同滅するには忍びない、そこで、お市の方に向って、汝《なんじ》はこれより城を出でて秀吉の手にすがれ、主君の妹であるそちを、秀吉とても粗略には扱うまいから、早々城を出るがよいと、いよいよのとき言い渡したが、お市の方とても、いったん浅井に嫁いで、夫亡ぶる時におめおめと城を出た自分が、またもその先例を繰返すようなことができようはずはない、今度こそは、夫君と運命を共にする、だが、二人の娘は浅井の胤《たね》であって、柴田の子孫ではないから、これは秀吉の手に托しても仔細はあるまいと、二女を城外に送り出して、自分は二度目の夫柴田と運命を共にした――という物語が語られてある。が、一説によると、お市の方も実はこのとき救い出されたのだが、表面はドコまでも柴田と共に亡びたということにして置
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