限りのお別れなんですもの、のぼせあがって目が見えなくなってもかまわないじゃないの、ねえ一緒に入りましょう。また、あなた、今になって、いやに御遠慮なさるのねえ、白山白水谷のあの道中で、あの通りの道心堅固なあなたじゃありませんか、いまさら一緒にお風呂を浴びたからとて、落ちるようなあなたでもなし、落すほどの腕を持ったわたしなら何のことはないわ、ああ、あのお湯が鉛なら溶けてこの身をなくしてしまいたい……」
女は、煙管《きせる》を抛《ほう》り出して、やけを繰返したかと思うと、衣桁《いこう》から浴衣《ゆかた》をとって、兵馬のドテラの帯に手をかけました。
五十七
宇津木兵馬は、その翌朝、まだ暗いうちに馬をやとうて、あわら[#「あわら」に傍点]を出立しました。
芸妓《げいしゃ》の福松は戸際まで送り出でたけれども、お大切にという声がつまってしまったものですから、そのまま奥へ引込んで出て来ませんでした。
さすがにこの女も、一間の中に泣き伏してしまったらしい。泣けて泣けて止まることができないために、意地にも、我慢にも、面《かお》が出せなくなったと解するよりほかはない。
兵馬も
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