泉へ温泉宿を経営いたします、そうして丸髷《まるまげ》に結って、鉄漿《かね》をつけて、帳簿格子の前にちんとおさまって、女中男衆を腮《あご》であしらうおかみさんぶりを早くあなたに見せたい、きっと、遠からぬうちに、そうして見せるわ。どのみち、お約束ですから明朝はあなたを立たせて上げますけれど、お上りにしても、お下りにしても、長くてここ一月の後、この福井へ廻り道をなさらないと恨みますよ、そんなことを言っていると、もう焦《じれ》ったいわ、看板を買い、株を買い、自前になるとかならないとか、そんなこと間緩《まだる》くて仕方がない、今晩からでも廃業して、一本立ちの温泉宿のおかみさんと言われて人を使ってみる身分になりたい、いやいや、明日からまた、世間様の機嫌気づまを取って暮すことになるかと思うと、うんざりする。人間てわがままなのね、気の変りっぽいものね、今の先は、身の落着きがきまったと言って大よろこびで吹聴していたくせに、今となって、もう芸妓はいやで、世帯持のおかみさんになりたい、温泉宿屋のお内儀《かみ》にでもなりすました気分で、おおたばをきめこんでいるところなんか、まあ、自分ながら図々しさに呆《あき》
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