ます。
「それは、いただきません、これはわたしのものではございません」
 そこで、問題の三百両の大金を前にして、二人の間に辞譲の押問答がはじまりました。
 兵馬は、これはたしかに福松への授かり物で、本来は、代官の胡見沢《くるみざわ》が百姓をしぼって淫婦お蘭に入れ揚げた金だから、それが偶然の機会で福松の手に落ちたのは、すなわち授かり物であって、お金のためから言っても、淫婦の手に渡って湯水のように使われるよりは、福松の手に使われた方が有利にもなり、人助けにもなる、ほかへはドコへ持って行き場のない金、つまり天の与うる物を取らざれば、わざわいその身に及ぶというようなことを説いて――それは寧《むし》ろ福松の最初からの口伝《くでん》のようなものですけれども、それを繰返して述べて、福松に渡そうとすると、福松がそれを押し返して、なるほど、それはそうに違いないでしょう、わたしとしても、自分が汗水で儲《もう》けた金とは思わないけれども、それにしても馬鹿正直に届ける必要のないお金、もとへ返す便りもないし、もとへ返すよりは、こちらで有効につかった方が、身のためにも、人のためにもなるというもの。そこに義理を立て
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