であってみると、拙者相当の取越し苦労で心配してあげていた、それが、渡りに舟で、先方からそういう話が向いて来たのは何より。では、君はここで安定しなさい、そうすれば、拙者はこれで心置きなく、自分の目的へ向って進行することができる」
この改まった言葉を聞いて福松が、がっかりして狼狽《あわ》てました。
「あら、そんなはずではありませんのよ、わたしが嬉しいことは、あなたにも悦んでいただきたいから申しあげたのに、わたしにここへ留まって、あなただけがお出かけなさるなんて、そんな情合いで申し上げたのじゃあありません。何でもいいから、暫く御逗留なさいね、少しの間、この福井の御城下を見物したり、三国へとうじんぼう[#「とうじんぼう」に傍点]をたずねたりして、当分こちらにいらっしゃいね。わたしの家ときまったところに落着いて、一月でも、二月でもいいから、そうして、お厭《いや》になったらいつでもお出かけなさいね。ほんの、一月か二月、いらっしゃいよ、わたしの家で、わたしが看板をあげた家に、大威張りで、誰にも気兼ねをする者はありゃしませんわ、あなた一人を、後生大事の大事のお旦那様にして、猫にもさわらせないようにし
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