待ったった」
「すっぱと、らっぱと、待ったった」
こういうかけ声をしながら、息せききって走《は》せつけて来るものがあるのですから、源松は、その行手を慮《おもんぱか》らないわけにはゆきません。
「すっぱと、らっぱと、待ったった」
「すっぱと、らっぱと、待ったった」
後ろから走せて来たのを、避けてやり過してやろう――轟の源松は、路傍の草の中へ少し身を引いていると、
「すっぱと、らっぱと、待ったった」
「すっぱと、らっぱと、待ったった」
怪しげな掛声に呼吸を合わせて、走せて来たのは、まさしく今の犬を追いかけて来たものでしょう。と見ると、犬の大なるに比して、人の小さいこと、ほとんど子供と思われるほどの弾丸黒子《だんがんこくし》、それが、宙を飛んでかけつけた。紺かんばんに、杖を調練の兵隊さんがするように肩にかけて、まっしぐらに馳《は》せて、せっかく道を譲った源松に目もくれず、辞譲のあいさつをする余裕もなく、今し逃げ去った豪犬のあとを追って走り来《きた》り、走り去るのであります。
それをも、源松は暫く面くらって見送っていたが、その時急に呼びさまされたことは、犬ははじめて見る豪犬だが、人間は
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