たろう」
轟の源松は、一面わが身につまされる淡い感慨の息を吹いている。源松は、文吉ではない。その職務としては同じようなことをしているようなものの、性質が違っている。どのみち、人にはよくは思われない職務にいたが、かりに同職として見ても、この文吉の成れの果てに歎息はしても、さまでの同情は持てないらしい。それというのは、源松には源松としての気負いがあって、自分は腕で行くのだ、こいつのように利で動いて、人を陥れることで己《おの》れの功を衒《てら》うような真似《まね》はしない。罪悪を罪悪として摘発することは己れの職務だが、罪悪を罪悪として作り立てて人を陥れることは、江戸っ児にはできねえ、という自負心があった。おれのは本職だが、こいつはインチキだ、二足も、三足も、わらじをはいている奴だ、我々同職の風上にも置けない奴なんだ、という腹があるから、同情に似た痛快、痛快に似た同情の、歯がゆいような心持で、それをながめながら、
「わかっておりますよ、わかっておりますよ、こいつを殺したのは、土佐の高市瑞山《たけちずいざん》という人の弟子たちで、みんなが先を争ってこいつを殺したがったんですが、その中で鬮取《く
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