れたのだが、離れたその事の裏にすでに危機が孕《はら》んでいる。両虎相対して無事に済まない種が蒔《ま》かれている。表は立派に名分と理解とによって分れたのだが、内心の決裂は救う由なきことは申すまでもない。近藤の内命を受けて間者の役をつとめたのが斎藤一、御陵衛士隊長の伊東と、薩州の中村半次郎とが気脈を通じて、近藤勇暗殺の計画が熟していることを斎藤一が探知して、これを近藤に報じたから、先手を打って近藤が伊東を誘殺したのであった。単に伊東一人を殺しただけでは納まらない、根を絶ち、葉を枯らさずんば甘んずることをしないのが近藤の性癖である。そこで斬捨てた伊東の屍骸《しがい》を白日の下《もと》に曝《さら》して、残るところの隊士の来《きた》り収むるを待った、来り収むるその機会を待って、その来るところのものを全部、隊長と同様の運命に会わせようとするのもくろみであった。
果せる哉《かな》、変を聞いた御陵衛士隊勇士の一連は、甘んじてその網にひっかかりに来た。みすみす新撰組のおびきの手と知っても、往きゆいてこれを収めざれば隊士の面目に関する。
そこで、隊士中の錚々《そうそう》、鈴木樹三郎、服部武雄、加納道之
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