異とするにも足りない。
 ただ前の前世の仇は、ともかく首尾よくこの飄客《ひょうかく》の体の上を、無断通過することに成功したけれど、あとからの前世の敵は、それに成功すべくして途中で意外な魔手にさまたげられたというだけのことでありました。
 だが、人間というものは、猫を飼うべく出来ているもので、猫を殺さねばならぬ前世の宿縁というようなもののないはずであるのに、罪のないのに南泉坊に切られたり、こんなところへ出現したり、非業なものに出来ておりました。寝入りばなの竜之助は、つづいて追いかけて無断突破を企てたその猫めを、単に木戸をついて妨げたのみではありません、それを払いのけてかっ飛ばしたというだけのものでもありません、猫めの頭と首のところを持って、無慈悲にそれを掴《つか》んだために、掴みつぶしてしまったのです。それ故に猫が、
「ギャッ」
と言いました。そのギャッはなまなかのギャアではない、断末魔の叫びであったのを、かわいそうとも何とも思わずに、そのまま一方に向って邪慳《じゃけん》に取って投げたものですから、遥《はる》か隔たった一方の壁にしたたかぶっつかって、そこで改めて、
「ギュー」
と言いまし
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