口調で、たださえよくわからないが、その早口のうちに聞いていると、朝霧の妄執のために一片の御回向なにがしとやら言ったな、朝霧! というのは、島原で雑魚寝《ざこね》をしたくすぐり合いの雛妓《すうぎ》の一人で、最後まで留り残されたあれだな、いや、最後に拾い物をしたあの子供の名が朝霧といったな、これが、もはや妄執となって、一片の御回向下の人にされているとは、さりとは気が早過ぎる。
 いや、こっちが気が早いのだ、朝霧といったところで、天下に一人や二人ではあるまい。あの時の朝霧は罪のない舞子で、ここで回向をされようというのは罪業深い過去仏のことだろう。
 そんなことを考えて、竜之助は、ともかくも、この声のする方へ近づいて行くと、
「これはこれは、あなた様は、いずれにおすまいでいらせられまするか」
「高台寺の月心院に」
「ええ、何と仰せられました」
 堂守の尼が聞き耳を立てました様子ですから、竜之助は重ねて、
「月心院の庫裡《くり》に、しばらく世を忍んでおりまするが、今晩、月がよろしいようですから、ついうかうかと出て参りました」
「まあ、その月心院の庫裡と申しますのを、あなた様は御承知の上でおすまい
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