彼等もズルイ、急に沈黙を守り出して、木と、茅《かや》と、石と水との中に没入し、人をしてその痕跡を認めしめない芸当は心得ていたようです。
揚雲雀《あげひばり》というものは、中空高く囀《さえず》りつつ舞っているが、己《おの》れの巣へ降り立とうとする時は、その巣より遥かに離れた地点へ着陸して来て、そこから麦の株や、畦《あぜ》の間を、若干距離のあいだ潜行して来て、はじめて己れの巣にありつくものだが、この二人の壮士も、その鳥跡に学ぶところあって、川渡りの地点は巣に遥かに遠いところであったが、そこから橋の袂の元巣までたどりついた間の行動は誰にもわかりません。
しかしまた、上手な雲雀取りは、右の雲雀の着陸点をまず認めておいて、そのあとをひそかに追ったり、前路を考えて、これを要したりすることもあるように、轟の源松も、いったんは橋から河原へ飛び下りたが、それより後の行動は、月にも水にも知らせません。しかし、程経て、二人の壮士は橋の袂の穴っ子へ到着しました。
その橋の袂の穴っ子こそ、彼等の住所であって、その先祖をたずぬると、大燈国師伝以来の由緒のあるところです。二人がこの穴っ子へトヤについてしまった
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