目も当てられぬ乱軍であります。
 御大将の村正どん、無論、総勢を引受けて、ひるまず応戦すると共に、折々奇兵を放って、道具外れの意外の進撃をするものですから、そのたびに抗議が出たり、復讐戦が行われたり、その揚句は計らずも聯合軍の結成を誘致してしまいました。唯一の大人、大人のくせに卑怯な振舞をする、乱軍の虚を狙《ねら》っては道具外れ、くすぐるべき急所でないところをくすぐるのは国際法に反している、こんな卑怯な大人からやっつけなければ、正しい戦争はできない、そういう不平が勃発して、そこで、同志討ちの戦闘が一時中止されて、聯合軍の成立を見ました。
「やっつけちゃいなさいよ」
「こんな卑怯な村正て、ありゃしない」
「油断してるところをね」
「ばかにしてるわよ」
「大人から、やっつけちゃいなさいよ」
「村正を切っちゃいなさいよ」
「打っておやりよ、くすぐるだけじゃ仕置にならないわ」
「癖が悪いわ」
「抓《つね》っておやりよ」
「こいつめ、こいつめ」
「村正のなまくらめ」
「のし[#「のし」に傍点]ちゃいなさいよ」
 聯合軍が同盟して、激烈な包囲攻撃やら、爆弾投下まではじめたものですから、たまり兼ねた
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