捕れと言うから、この脇から十手を抜いて駈け出したら、その野郎は一散に浅間の方へ逃げおったから、とうとう追いかけて近寄ったら、二尺九寸の一本脇差を反り返して、
『お役人様、お見のがし下されませ』
と言ったから、
『うぬ、なに見のがすものだ』
とそばへ行くと、その刀を抜きおったが、引廻しを着ていたが、そのすそへ小尻[#「小尻」に傍点]がひっかかりて一尺ばかり抜きおったが、おれが直ぐに飛び込んで、柄を持ってちゅうがえりをしたら、野郎も一緒にころんで、おれの上になったが、後ろから平賀村の喜藤次という取締が来て、野郎の頭をもってひっくり返した故、おれも起き上りて十手にてつつき散らした、それから縄を打って、追分の旅宿へ引いて来た。上田|小諸《こもろ》より追々代官郡奉行が出て来て、野郎を貰いに来た。こいつは小諸の牢に二百日ばかりいたが、或る晩牢抜けをして、追分宿へ来て、女郎屋へ金をねだり、一両取って帰る道だと言った。音吉とて子分が百人もおるばくち[#「ばくち」に傍点]打だと役人が話した。それから大名へ渡すと首がないから、中の条の陣へやった。その後、そいつの刀を兄がくれたが、池田鬼神丸国重という刀だっ
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