死ななかった、どれ飯をやろうとて、飯や、肴《さかな》や、いろいろのさい[#「さい」に傍点]を竹の皮に包ませ、銭を三百文つかんでくれた、おれは地獄で地蔵に逢ったようだと思って、土へ手をついて礼を言ったら、その客が手前は江戸のようだが、ほんとの乞食ではあるまい、どこか侍の子だろうとて、女郎にいろいろ話しおるが、緋縮緬《ひぢりめん》の袖のついた白地の浴衣《ゆかた》と、紺縮緬のふんどしをくれたが、嬉しかった。その晩は木賃宿へ泊って、畳の上へ寝るがいいと言った故、厚く礼を言って、それから伝馬町の横町の木賃宿へ夜になると泊ったが、しまいには宿銭から食物代がたまって、払いに仕方がないから、単物《ひとえもの》を六百文の質に入れてもらって、早々そこのうちを立って、残りの銭をもって、上方へまた志して行くに、石部《いしべ》まで行って或る日、宿の外れ茶屋のわきに寝ていたら、九州の秋月という大名の長持が二棹《ふたさお》来たが、その茶屋へ休んでいると、長持の親方が二人来て、同じく床几《しょうぎ》に腰をかけて酒を飲んでいたが、おれに言うには、手前はわずらったな、ドコへ行くと言うから、上方へ行くと言ったら、当てがある
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