勤王或いは別種の新勢力が取って代るべき時代が到来している。その新時代の新勢力の中へ、自分が一方の長として大手を振って合流することができる。勤王は自分の本来の持論であるのだ。
 第三には、右の意味に於て、自分には有力なる大藩や公卿のバックがある。それというのは、新撰組の兇暴に辟易《へきえき》しきっているこれらの諸藩閥が、一つには彼の勢力を殺《そ》ぎ、一つにはそれに対抗するために、別に一勢力を欲しがっている。自分がその適任と認められている。すなわち幕府方に近藤あるが如く、勤王方は自分を盛り立てようとする有力者が多い。
 それから、今日――から今晩にかけての会見についても、隊の者は不安がったが、自分はタカを括《くく》っていた。近藤といえども、もはや、おれの御機嫌を取らぬことには地位が不利益だということに気がついたのだ。いったい、近藤という男を、世間は兇暴一点張りの男とのみ見る奴が多いが、どうして、彼はなかなか眼さきも利《き》いているし、機を見るに敏な奴だ。不幸にして彼は有力な藩に生れなかったから、独力で今日の地位に驀進《ばくしん》しただけのもので、彼を西南の大藩にでも置けば、勤王方の有力なる
前へ 次へ
全356ページ中264ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング