す限り茫々《ぼうぼう》たる薄野原《すすきのはら》でありました。
 机竜之助は、「柳緑花紅」の石に腰打ちかけて、腰なる煙草入を取り出して、燧石《ひうちいし》をカチカチ、一ぷくの煙草をのみ出しました。今日まで机竜之助が杯《はい》を傾けたということは見えているが、未だ煙草をのんだという記録はなかったように思う。ここへ来てはじめて悠々と煙草をのみ出している。
 煙草をのみながら、透綾《すきや》のように透き通る笠の、前半面から、悠然として、目に余るすすき野原をながめているのであります。
 そうすると、暫くして、行手の右の方の蜿蜒《えんえん》たる一筋路は伏見街道――やはり、すすき野原を分けて、見えつ隠れつ、一《ひ》い、二《ふ》う、三《み》い、三梃の乗物が、三人の従者に附添われながら大和路へ向って行くのを見る。
「おーい」
と机竜之助が、これを見かけて、片手をあげて呼ぶと、あちらでも、
「おーい」
 答えはあったが、人が見えない。
 机竜之助は、あわただしく火打道具を腰にはさんで、笠の紐をとって、それを片手に高く打振りました。
「おーい」
 あちらでも、
「おーい」
 すすき野原の中から、こだまを返
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