りに致そう、たよりをくれ給えよ、綴喜郡の田辺のこれこれへ、京へ着いたら忘れないように早々便りをくれ給えよ」
「先刻心得ておりますよ」
「財閥へうまく胡麻をすって、大儲《おおもう》けに儲けなさいよ」
 これはよけいなことでした。こういうことは、この際、口走らない方がよかったのですが、どうも、御人体《ごにんてい》で如何《いかん》ともし難いと見える。
「ようござんすとも、どっさり儲けて、上方のお酒の相場を狂わすほどに飲ませて上げますよ、もうたくさんとおっしゃっても、口を割って飲ませて上げますよ」
とお角さんが応酬しました。前口上の、御意の通り大いに儲けて、上方のお酒の相場を狂わすほどに飲ませて上げますよはいいとしても、あとの、もうたくさんとおっしゃっても、口を割って飲ませて上げますよは、よけいなことです。道庵も、口を割ってまで飲ませられてはたまるまい。
「なにぶん頼む」
 それを道庵が素直に受けますと、お角さんが今度は健斎老の方へ向き直り、これは道庵先生に対するとは打って変った慇懃《いんぎん》ぶりで、
「では健斎先生、これでお暇《いとま》を申し上げます、この上とも、万事よろしくお願い申し上げ
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