うのです。
 やがて程遠からぬ追分まで来ると、例の「柳緑花紅」の道しるべの前で、前後のあんぽつ[#「あんぽつ」に傍点]だけが乗物をとどめ、まんなかの四ツ手は先をきって、静かに打たせて行きます。前後のあんぽつ[#「あんぽつ」に傍点]が停ったかと思うと、両方から一時にころがり出したのは、前なるは健斎国手、あとのは道庵先生でありました。
「やれやれ、御苦労さま」
 道庵が額の汗を拭きますと(汗は出ていないのだが、手加減で汗を拭く真似《まね》をする)お角さんが、
「先生、御窮屈でございましょうね」
「わしゃ、どうも、駕籠乗物よりは、事情の許す限り徒歩主義でしてね」
 そう言うと健斎国手も、
「いや、わしも歩くのが好きなんだ、では、これからずうっと歩くことにしようじゃないか、時に随って、或いは歩み、或いは乗るということにして行こう」
「賛成」
 二人はそういうことに同意をしました。お雪ちゃんの乗物は、一町ばかり先に休んでいる。こういう行き方にも、またお角さんの気の利《き》いた細かな勘が働いているものと思われます。
「では親方」
と道庵が改めて、お角の方へ向き直り、
「京都でゆっくり再会という段取
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