やっと眼がさめた様子を見計らって、外からお角さんが言葉をかけました、
「お目ざめになりましたか」
「はい」
お角さんが、屏風をちょっと押しやると、そこで枕についていたのは、やっぱり女の人であります。枕にかかる洗い髪は、まだ若い緑の黒髪がたっぷりしていました。
そうすると健斎老が、これは無言で膝行《いざ》り寄り、患者の枕許へ手を入れて、しずかに取り上げた小腕を見ると細くて白い。
「ねえ、お雪様」
と、お医者さんに脈を見せて置いて、これも一膝進ませたお角さん。
枕に親しんでいるのはお雪ちゃんであります。お角さんは、お雪ちゃんを呼ぶに、お雪ちゃんともお雪さんとも言わない、お雪様と本格扱いです。
「はい」
「先生が、わざわざ田辺からおいで下さいまして、もうすっかり、こっちのものだと太鼓判をお捺《お》しになりましたから、御安心なさいませよ」
「はい」
「そうしてね、お雪様、ここは閑静で、いつまで保養をなさっていてもかまいませんが、何を言うにも宿屋のことですから、行届き兼ねます、あなた様は、大阪へ帰りたい帰りたいとおっしゃいますが、いっそ、暫くこの先生のお宅に御厄介になって、それから充分おた
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