っしゃになってから、大阪の方へお帰りになるようになさってはどうですか」
「はい」
何を言っても、はいはいと逆らわない。逆らわないだけたより[#「たより」に傍点]のないような心持もする。その時、脈を取り終った健斎老が、
「もうほとんど平脈、危険のおそれ更になし、どうです、今このおかみさんがおっしゃる通り、僕のところへおいでなさい、綴喜郡の田辺というところだ、京都から見るとずっと田舎《いなか》だが、空気もいいですよ、小高い山の上に別荘がある、そこで充分に保養なさい、健康が全く回復してから大阪へ送って上げますよ」
「はい、有難うございます」
素直に納得するのを、お角さんがまた傍らから力をつけて、
「そうなさいませよ、万事、少しも心配はいりません、あとのことも、先のことも、すっかりいいようにして上げてありますから」
「有難うございます」
「それから、もう一つ心強いことはね、お雪様、あなたも御承知のあの長者町の道庵先生が御一緒に参りますから、安心の上にも安心でございますよ」
「あの、道庵先生が――」
ここで、お雪ちゃんがはじめて、「はい」と「有難う」との単語のほかに、些少《さしょう》ながら
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