外されて、別に何か墨蹟がつっかかって、その下には、松が一枝活けてあるばっかり。
床の間へ摺《す》り寄って見た道庵先生は、このかけ替えられた軸物を、皮肉らしい面《かお》をしてつくづくと見つめると、
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鼠入|銭※[#「竹かんむり/甬」、第4水準2−83−48]《せんとう》伎已窮
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と、いけぞんざいに書きなぐってある。その下の落款《らっかん》を見ると、「一休純」と読める。そこで道庵先生が、
「一休め、皮肉な文句を書きやがったな」
と一謔《いちぎゃく》を発しただけで座につきました。座につくと、座蒲団《ざぶとん》も、机も、煙草盆も、普通一通りのものが備わっていて、お銀様の時のとは品は変るが、万端抜かりないことは同じで、ただ坐り込んで召使を呼びさえすれば事が足るように出来ている。
そこで、一ぷくしてから、先生が御自慢の本草学にとりかかりました。
つまり、宿からここへ送らせた旅嚢《りょのう》を、すっかり座敷へブチまけて、植物と押葉の分類をはじめたのです。それをはじめ出すと熱心なもので、さすがに心がけある先生だけに、つとめるところは、きっとつとめる。
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