この斥候《せっこう》を放つ所以《ゆえん》なのでありました。
この命令を下しているところへ、急に伝令が一人、本館の方からはせつけて来まして、
「先生、不破様からのお使者が参りました」
「なに、関守氏から使者が来た、早速ここへ通すように」
案内につれて、そこへ風を切ってやって来たのは、ほかならぬがんりき[#「がんりき」に傍点]の百蔵です。
すっかり旅の装いが出来ている。しかもその装いは、不破の関守氏がここで用意して行った装束そっくりですから、何物よりもそのいでたちが、まず門鑑として物を言いました。
「ごらん下さいまし、不破様からお手紙をお届け致すようにとの御沙汰で持って参じました」
「それはそれは、御苦労さま」
と言って青嵐居士は、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百蔵が差出す手紙をとって、封を切りながら、三騎の斥候に向って言いました、
「諸君、少し待ち給え、今、この手紙を読み了《おわ》って、それからこの使者の文言《もんごん》を聞いてからの上で」
こう言って乗馬を控えさせて置いて、不破の関守氏からの手紙を、立ちながら読み下しているのを待ちきれず、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百
前へ
次へ
全356ページ中139ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング