見届けられる限り見届けて、深入りをする必要はないぞ、通りいっぺんでよろしいからそれを偵察しながら胆吹山まで行ってもらうのだ。その他、何に限らず、途中で眼の届く限りは見届けるがよろしい、たとえば、一揆《いっき》の首を振っているのはどんな人物で、役人たちが一揆の食止めの手配、そんなこともわかればわかるだけ見て置いて、そうして胆吹山まで、なるべく早く到着してもらいたい。見るには、いくら細かに見てもいいが、深入りは断じていけない」
「合点でございます、つっ走るだけの御用なら、当時、がん[#「がん」に傍点]ちゃんに限りますよ」
と、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百蔵は、いささか鼻を白《しら》ませてせせら笑いました。
字を書けの、歌を詠《よ》めのと言われては、がん[#「がん」に傍点]ちゃんもいささか凹《へこ》むだろうが、歩けと言われる分には本職です。それを特に鼻にかけてせせら笑ったのは、せっかくがん[#「がん」に傍点]ちゃんを見立てた御用としてはおやすきに過ぐると軽蔑したわけではないので、実はこの使命の中には、相当危険状態が含まれていることを、がんりき[#「がんりき」に傍点]はいささか予想し
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