れを見な、ここが逢坂山の大谷で、ここが大津だ、大津から粟津、瀬田の唐橋《からはし》を渡って草津、守山、野洲《やす》、近江八幡から安土、能登川、彦根、磨針《すりはり》峠を越えて、番場、醒《さめ》ヶ井《い》、柏原――それから左へ、海道筋をそれて見上げたところの、そらこの大きな山が胆吹山だ、つまり、これからこれまでの間を、お前に突破してみてもらいたいんだ」
「そう致しますと、つまりこの逢坂山から出立して、湖水の南の岸をめぐって、胆吹山まで歩いてみろ、とおっしゃるんでございますな」
「そうだ」
不破の関守氏は、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百蔵に向って胆吹マラソンのコースをまず説明して置いて、それから使命の内容をおもむろに次の如く述べました。
「いいか、君のその早足で、この間を突き抜けて通りさえすればいいようなものだが、通りがけに、できるだけ沿岸の観察をしてもらいたい。観察といっても風景や人情を見ろというのではない、昨今の民衆の暴動がドノ程度までに立至っているか、百姓一揆共が、ドノ方面に向って行動し、ドノ方向に向って合流しているか、また主力はドノ地点に根拠を置いて群がっているか、その辺を
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