せて置けば、七日や十日留守にしたからとて心配がない、と思えばこそなんだ。そこまで信頼されているとすれば、留守居もまた妙じゃないかね」
「わたしなんぞは何のお役にも立ちませんけれど、そういうわけでしたら、喜んでお留守をつとめましょう、事がわかりさえすれば、どのみち安心でございます」
「お銀様のことだから、きっと、相当の船を一ぱい借切って、自由自在に湖の中を乗り廻し、思う存分に見物をしておいでなさるに違いない、我々は、われわれとして、入り代りにひとつ第二軍を実行させてもらいましょう。どうです、江戸のあのお医者の先生にも少し逗留《とうりゅう》していただいて、あの先生をひとつ長浜から、大津まで送りがてら、お雪ちゃん、拙者をはじめ、同志を募集して湖上遊覧の第二軍をこしらえようじゃありませんか」
「それは結構でございますが、あの先生が、それまで待っていらっしゃるかしら。大津に、お連れの方がお待兼ねになっていらっしゃるようでございます」
三十七
不破の関守氏とお雪ちゃんがこんなことを話しているところへ、仕立飛脚が一人、息せき切ってやって来ました。
「ちょっと、ものをお尋ね申し
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